グループ事業の概況

キョーリン製薬グループは、持株会社であるキョーリン製薬ホールディングス(株)のもと、医療用医薬品を主とする医薬品事業を展開しています。新医薬品等では、特定領域(呼吸器・耳鼻科・泌尿器科)に経営資源を集中するFC(フランチャイズカスタマー)戦略をベースとして、革新的な新薬の創製、医薬品の開発、生産、販売を行うとともに、環境衛生や感染症診断に関わる製品、一般用医薬品等を販売しています。また後発医薬品においては、自社開発、生産、販売を行っています。

新医薬品等

新医薬品

「医療用医薬品」商品画像

~創薬~

健康に対する医療ニーズが多様化・複雑化し、これまで以上に新薬創出の難易度が高まる環境下、グローバルな製薬企業等による革新的な新薬創製がなされているものの、未だ数多くのアンメットメディカルニーズが存在しています。

杏林製薬(株)は、自社創薬に国内外の製薬企業、アカデミア、ベンチャー企業とのオープンイノベーションを加えることで、創薬プラットフォームの活性化、新技術の応用・育成に取り組むとともに、外部創薬テーマの積極的な探索・導入を行い、ファースト・イン・クラス創薬を推進しています。中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」では、革新的な新薬の創製を実現する創薬力の強化、中期的な成長を支える開発パイプラインの拡充、効率的な臨床試験の実施に最大限注力し、企業価値の向上を目指します。

2020年度は、再構築した創薬体制のもと、わたらせ創薬センターとActivX社(米国、以下AX社)との連携強化によるキナーゼ研究の推進や京都大学に設置した呼吸器疾患創薬講座との連携による線維化研究の深掘りを図り、重点領域である線維化研究・キナーゼ研究を中心としたファースト・イン・クラス創薬に取り組みました。また感音難聴を対象とする新規開発候補化合物については、オトノミー社(米国)に導出することができ、重症化リスクを有するライノウイルス感染症の治療薬「KRP-A218」については、第Ⅰ相臨床試験を開始することができました。

創薬本部における新型コロナウイルス感染症拡大の影響は軽微でしたが、2021年度も社員の安心・健康に留意しつつ研究開発活動を展開し、当社グループの最重要課題と位置づけている創薬力の強化、開発パイプラインの拡充に邁進いたします。

強み 機会 リスク
  • 疾患モデル解析技術および低分子創薬技術を有する わたらせ創薬センターとキナーゼ網羅的解析技術を有する ActivX社の協働によりターゲット探索と新奇な化合物の創製が可能(独自の創薬力)
  • 線維化研究、感染症研究、炎症研究等におけるアカデミアやベンチャー企業とのネットワーク(オープンイノベーションの推進)
  • 蓄積された低分子創薬技術をもとに新たに見出した創薬ターゲットについて複数のファーマコフォアを獲得し、異なる基本骨格からの最適化研究を進めるだけでなく、新たなモダリティ(核酸等)による開発を同時に進め、シーズの多様化を図ることで成功確率を高める
  • AI創薬台頭による低分子創薬の効率化(膨大なコスト削減、開発期間の短縮)による当社創薬の優位性の低下
  • メガファーマのICT、IoTを駆使した開発スピード
中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」
現行の重点研究領域・技術の重層化と、新たな研究領域・技術への挑戦を継続する 新薬候補品の医療における価値を明確化し、研究開発を推進する 創薬シーズを積極的に獲得し、多様性を高める
中期経営計画の施策
これまで蓄積した研究領域・技術の重層化と新たな研究領域・技術への挑戦

杏林製薬(株)わたらせ創薬センターは疾患モデル解析技術および低分子創薬技術を有し、AX社はKiNativ(キナーゼの網羅的解析技術)をプラットフォームとする技術を有しています。それぞれのポテンシャルを最大限に活かし、新奇(ノーベル)な創薬ターゲットの創出に向けて、重点研究領域である線維化研究、キナーゼ研究において研究探索初期段階テーマの量的・質的な充実を図りました。線維化研究では、アカデミアとの連携により、iPS細胞やヒト組織を用いて発見した創薬ターゲットに対して薬理活性を有する医薬候補化合物の探索に積極的に取り組み、特に繊維化のトリガーとなるターゲットに対する創薬に力点をおいて革新的新薬の創製に挑戦しています。

オープンイノベーションの推進

杏林製薬(株)は自社創薬を補完し、さらに強化する取り組みとして、早期探索ステージにある外部創薬テーマや候補化合物を積極的に調査し、自社が有する聴覚機能、膀胱機能、感染症等の評価技術基盤を活かして、スピーディに評価ができる体制の構築を目指しています。その中でアカデミアやベンチャー、国内外の製薬企業とのオープンイノベーションを推進しており、目指す創薬ターゲットに対して、様々な視点でアプローチしています。京都大学大学院医学研究科内に共同研究講座「呼吸器疾患創薬講座」を設置(2017年度)、2020年度より共同研究を3年間延長しアカデミアが持つ病態研究力および基盤研究力を杏林製薬(株)の創薬力に融合させ、創薬の新規ターゲット探索を進めることにしました。またエルサレム・ヘブライ大学の技術移転会社と呼吸器領域における疾患治療薬の創製を、公益財団法人微生物化学研究会微生物化学研究所と多剤耐性菌に有効な抗菌薬を探索する共同研究を行っています。
さらには新たな創薬基盤を構築するために外部から早期創薬シーズを積極的に獲得することにより、創薬シーズの拡充、疾患領域/モダリティの多様化、リスクの分散を図っています。

革新的新薬の創製に向けた取り組み

杏林製薬(株)では、研究領域・テーマの選択と集中を行っています。探索研究の初期段階においては、TTP(Therapeutic Target Profile:治療標的プロファイル※)とそれに向けた科学的アプローチを重視して創薬活動を進めています。またリード化合物の最適化研究以降は、TPP(Target Product Profile:目標製品プロファイル)を基にGo、No Goの判断を行っています。

さらに杏林製薬(株)では、以下の3つのアプローチにより、創薬活動を推進しています。

※杏林製薬(株)の医療価値の提供:どのような患者さん(疾病)のどのような症状(苦悩)の治療薬を創るのかについて、意識してテーマ立案を進めること

新奇ターゲットの探索

探索初期段階の研究を強化し、スピード感をもって新奇(ノーベル)な創薬ターゲットの探索とそのターゲットに作用する革新的な新薬の創製に取り組み、創薬初期段階の研究を量的・質的に強化するために、ヒト(患者)、病態モデル動物組織や細胞を用いて、KiNativやゲノム編集等の技術を応用し、ターゲット同定とバリデーションの質的向上に取り組んでいます。重点研究領域として線維化研究の強化を進め、基礎研究力を保有するアカデミアとも連携し、ヒト由来の疾患iPS細胞等の先端技術を最大限に活用して開発候補化合物を選択するための高いレベルの創薬評価を進めています。

モダリティの拡充

従来の低分子創薬に加え、中分子化合物、核酸医薬等の新たな技術を活用した化合物探索、さらには2020年1月に導入した融合タンパク製剤への取り組みにより、新たなモダリティの可能性にも挑戦し、グローバルを見据え低分子医薬では達成できない治療ニーズに貢献する新薬の創製にも取り組みます。

創薬研究拠点の再構築

「わたらせ創薬センター」の写真

探索初期段階の研究から開発研究までの全ての研究拠点を集約した わたらせ創薬センターでは、薬理、合成、安全性、薬物動態および製剤・分析の研究分野が効率的かつ連携のとれた体制で創薬研究を進めています。各分野に精通した研究者は、組織の枠を超えたチームで研究活動を行う体制により、研究開発のスピードアップと質の向上を図り、世界基準の創薬研究を実現します。

継続的に革新的な新薬を生み出す体制の構築

「継続的に革新的な新薬を生み出す体制の構築」イメージ図

~開発~

強み 機会 リスク
  • 呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科領域の製品開発におけるノウハウ・人脈・ネットワークを有する(特定疾患領域の開発力)
  • 効率的な臨床試験の実施、新薬の開発を進められる組織体制を有する
  • 治験(臨床試験)および新薬承認の厳格化による開発費用のさらなる高騰
  • 薬価制度改革による事業性への影響
中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」
導入対象疾患領域をFC3科(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)周辺、感染症、希少・難治性疾患とし、中期的な業績に寄与するパイプラインの拡充に積極的に投資する 自社でのPOC※取得を基本とし、早期のグローバル導出を目指す
※POC:研究開発の段階にある新薬候補物質において、その有効性や安全性がヒトで確認されていること
中期経営計画の施策
成長を支えるパイプラインの拡充

杏林製薬(株)は中期的な成長を支えるパイプラインの拡充を重要な経営課題の一つとして捉えており、特定領域(呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科)および感染症、希少・難治性疾患における開発パイプラインの拡充に取り組んでいます。

2020年度には、前立腺肥大症治療薬「AKP-009:導入先 あすか製薬(株)」を獲得しました。国内開発では、喘息治療配合剤「フルティフォーム」の小児適応追加、ニューキノロン系注射用抗菌剤「ラスビック点滴静注キット150mg」の上市を達成し、間質性膀胱炎治療剤「ジムソ膀胱内注入液50%」の製造販売承認を取得しました。

他方、自ら創製した化合物についてはライセンシング活動による早期のグローバル展開を目指しています。

開発品の動向
積極的なパートナリング活動の推進

杏林製薬(株)は中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」の事業戦略に沿って、2020年9月、あすか製薬(株)と前立腺肥大症治療薬「開発コード:AKP-009」の共同開発および販売等に関する契約を締結、また2021年4月、MSD(株)と同社が製造販売承認を申請している慢性咳嗽治療薬「ゲーファピキサント」の日本国内での独占販売に関する契約を締結し開発パイプラインの拡充を図りました。2020年1月に米国エイタイヤー社とライセンス契約を締結した間質性肺疾患治療薬「KRP-R120」については、日本で間質性肺疾患(肺サルコイドーシス等)での開発を進めています。

当社グループは、今後もワールドワイドでのパートナリング活動を積極的に展開することにより、中期的な成長を支える製品パイプラインの拡充を図り、重点領域である呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科において高いプレゼンスの確立を目指します。

グローバル導出を促進し、海外収益を拡大する

杏林製薬(株)は自社創製品の価値最大化の取り組みとして、グローバル企業への導出活動を積極的に展開しています。自社創製した感音難聴を対象とする新規開発候補化合物について、2020年8月、米国オトノミー社とライセンス契約を締結し、同社に全世界における本剤の開発権、製造権および販売権を供与しました。また2020年10月、プリオセラ社に免疫調節薬「KRP-203」に関わる知的財産権等を譲渡し、2021年3月には、エーザイ(株)と過活動膀胱治療剤「ビベグロン(日本販売名:ベオーバ)」のASEAN4カ国における開発・販売に関するライセンス契約を締結しました。

さらにニューキノロン系合成抗菌剤「ラスクフロキサシン(日本販売名:ラスビック)」についても、現在海外導出に向けた活動を行っています。

国内外企業とのパートナリング

「国内外企業とのパートナリング」イメージ図

アジアへの直接的進出に向けた取り組み

ライセンス活動と並行して、アジアを中心に将来の直接的進出の礎を築くべく、東南アジアでの市場調査・情報収集等を行いました。2017年、Meiji Seika ファルマ(株)のインドネシア子会社PT.Meiji を通じて環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」を販売し、またベトナム企業のビディファー社とGE医薬品の製剤技術に関するライセンス契約を締結、2019年にはモンゴル企業モノスファームトレード社とGE医薬品の販売権に関する契約を締結しています。

今後は現地で収集した情報に基づき、直接的な進出に向けた検討を重ね、着実に推進していきます。

~営業~

国内の医療用医薬品業界では、薬価制度改革の基本方針のもと実施された薬剤費抑制策により、市場構造の変化が起こっています。このように厳しい市場環境の中、当社グループは中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」をスタートしました。その初年度となる2020年度は、再成長期のスタートとして捉え、新薬群の普及に努めました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症禍の受診抑制により杏林製薬(株)が重点領域とする市場の低迷や、MR活動の自粛により新薬群の市場浸透に遅れが生じ、年度計画は未達となりました。一方、新たな営業スタイルとして、感染症領域では治療薬のみに留まらず予防・診断も含め、トータルで課題解決を提案するソリューション提供型の活動を展開し、一定の成果を得ることができました。さらに時代の要請に応えるべく、リアル面談を中核にデジタルを融合した情報提供を行うことにより営業活動の補完・強化を図り、各医療機関の意向に沿ったMR活動を行い、新薬群の成長加速を期待できる基盤を構築できたものと評価しています。

2021年度も新型コロナウイルス感染症は当社の営業活動に影響を及ぼすものと考えますが、成長トレンド実現の転換期と位置づけ、感染症領域におけるソリューション提供型への変貌やリアル面談とデジタルの融合を積極的に展開し、新薬群の成長加速を実現していきます。

強み 機会 リスク
  • 特定領域(呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科)におけるプレゼンス、信頼関係の高さ(FC:フランチャイズカスタマー戦略)
  • 持続的な成長を実現する製品ポートフォリオ(特定領域に関連する製品の拡充)
  • エリアマネジメントとチーム制による医療機関に対するきめ細かな対応
  • 感染関連事業として予防(ミルトン、ルビスタ)、診断(GeneSoC®)、治療(ラスビック)に貢献する製品群を有する(ソリューション提供型)
  • 成長ドライバーとなるフルティフォーム、デザレックス、ベオーバ、ラスビック等、特許を有する新薬群が出揃い、売上の大幅な成長期を迎える
  • 迅速、的確、簡便に原因微生物を同定できるマイクロ流路型遺伝子定量装置「GeneSoC®」および診断薬開発により、感染関連事業において予防、治療に加えAMR(薬剤耐性)の課題解決策を提供できる
  • MR訪問規制や完全アポイント制が進み、医師の情報入手方法がこれまでの対面形式からネット経由などに変化、面談機会が減少する
  • 薬価制度の抜本改革による長期収載品の売上減少が加速する
  • 国内医療用医薬品市場の構造変化への対応力、スピード感を持った対応が求められる
中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」
医療用医薬品事業と感染関連事業を複合した、ソリューション(課題の解決策)提供型に変貌し、医療関係者に対してキョーリン独自の貢献をする 新薬群(フルティフォーム、デザレックス、ベオーバ、ラスビック等)の成長を最大限に加速する ヘルスケア事業は、感染関連を中心に事業を集約化して、ソリューション提供型に変貌する
中期経営計画の施策
ソリューション提供型の営業スタイルへの変貌

感染関連事業を新薬事業に融合したソリューション提供型の活動を通じて、医療関係者に対してキョーリン独自の貢献を行う取り組みを開始しました。医療関係者の中でも特にICT(感染対策チーム)、AST(抗菌薬適正使用支援チーム)に属する医師、薬剤師、看護師に、予防として「ルビスタ」「ミルトン」、診断として「GeneSoC®」、治療として「ラスビック」を紹介し、総合的な情報提供をすることにより、キョーリンのオリジナリティー発揮を目指します。

感染症に対する取り組み

世界的な脅威となっているAMR(薬剤耐性)や新型コロナウイルス感染症の拡大等によって、これまで以上に感染症に対する予防、診断、治療へのニーズが高まっています。当社グループでは、医療関係者に対して感染関連領域におけるソリューション提供活動を実施しており、予防・診断・治療の多面的な視点から感染症・感染制御に関する総合的な情報提供や課題解決の提案を行っています。

「世界の人々の生命を脅かす薬剤耐性菌」のグラフ

※世界の人々の生命を脅かす薬剤耐性菌

抗菌薬の不適切な使用を背景として、薬剤耐性菌が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり、国際社会でも大きな課題となっています。このままの状況が続けば、薬剤耐性菌感染症による全世界の年間死亡者数は、2013年の約70万人から2050年には、約1,000万人まで上昇するとの予測もあり、現在、世界規模でAMR対策が進められています。

(Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nations The Review on Antimicrobial Resistance Chaired by Jim O’Neill December 2014 を改変)

感染関連事業モデルの確率

診断迅速・適確・簡便に原因微生物を同定し、
感染拡大防止や抗微生物薬の適正使用を実現する

「GeneSoC®」の写真

「GeneSoC®」

現在、新型コロナウイルス感染症への対応やAMR対策の観点から正確かつ迅速に原因微生物を同定するための検査設備の拡充が求められています。

マイクロ流路型遺伝子定量装置 「GeneSoC®」は迅速・的確・簡便に原因微生物を同定できるリアルタイムPCR法に基づく遺伝子定量装置です。現在、「GeneSoC®」を用いた新型コロナウイルス検出試薬「SARS-CoV-2GeneSoC ER 杏林」「SARS-CoV-2GeneSoC N2 杏林」、研究用試薬4製品を発売しています。今後、より小型化された「GeneSoC® mini」や簡易核酸抽出試薬の開発を通じて、臨床現場での迅速検査へのさらなる貢献を目指すとともに、体外診断用医薬品の事業化を推進していきます。

治療適正使用の普及活動を通して感染症治療に貢献する

「ラスビック」の写真

「ラスビック」

当社グループでは、医師、薬剤師をはじめ、臨床検査技師等を含めたICT(感染対策チーム)、ならびにAST(抗菌薬適正使用支援チーム)に対して薬剤耐性菌の動向調査や学会サーベイランス事業等への協力、感染症関連学会や研究会等への協力・サポートを介した情報提供を推進し、抗微生物薬適正使用の普及啓発活動を進めていきます。このような中、「ラスビック」は錠剤、注射剤により感染症治療に貢献しています。

予防医療機関等の感染制御に貢献する

「ルビスタ」「ミルトン」の写真

「ルビスタ」「ミルトン」

医療機関の環境中には様々な微生物が存在し、近年は環境を介して微生物がヒトからヒトへ伝播することが分かっています。環境からの微生物の伝播の多くは環境表面から手指を通じて起こるため、手指消毒に加え環境表面を清浄に保つことが重要です。

杏林製薬(株)では、医療機関等の感染対策を目的とした、環境除菌・洗浄剤「ルビスタ」、および消毒剤「ミルトン」をラインアップとして有しており、感染制御に貢献しています。

新薬群の成長トレンドの実現

「ステージ3」の成長ドライバーは喘息治療配合剤「フルティフォーム」、アレルギー性疾患治療剤「デザレックス」、過活動膀胱治療剤「ベオーバ」、ニューキノロン系抗菌剤「ラスビック錠・点滴静注キット」等の新薬群です。2020年度は薬価改定および新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により、重点領域とする医療用医薬品市場は約15%縮小しました。このような中、「フルティフォーム」の売上は133億円と前期より減少しましたが、シェアは拡大し15.5%となりました。今後は、エアゾール製剤の有用性を訴求し喘息治療におけるファーストチョイスのポジショニング確立を図り、シェア30%を目指します。「デザレックス」は、2021年3月末に供給一時停止前(2018年12月)のシェアまで回復しました。今後は、耳鼻科処方率No.1を目指すとともに内科での処方拡大に努めます。「ベオーバ」は、投薬期間制限解除後(2019年12月)、予想を上回るスピードで処方が進み、出荷調整を行う結果となりました。医療関係者の皆様にはご迷惑をお掛けしておりますが、現時点で出荷調整解除は2022年度中を見込みます。「ラスビック」は、新型コロナウイルスの感染予防策徹底による抗菌剤市場の縮小の影響を大きく受けました。2021年3月に「ラスビック点滴静注キット」を発売し、2021年度は錠剤とあわせて呼吸器・耳鼻咽喉科感染症治療への貢献を目指します。

2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響を一定程度見込んでいますが、「ステージ3」期間中の成長ドライバーとして最大限注力し、成長トレンドの実現に邁進します。

FC領域でのプレゼンスの確立

杏林製薬(株)は呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科を中心とする特定領域におけるプレゼンスの確立を目標として掲げ、約700名のMRが医療関係者に医薬品の適正使用に関わる情報提供・収集・伝達活動を行っています。

営業体制としては、二次医療圏をベースとしたチーム制(一定のエリアを複数のMRで担当する制度)を導入し、チーム全体でエリアを育成すべく、エリアマネジメントを展開しています。今後も、多様化する医療ニーズに迅速かつ組織的に対応するこの取り組みを進化させ、お互いが助け合いチームで目標を達成する風土づくりを促進します。

-MRの体制-

「MRの体制」円グラフ

特定領域(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)を中心とする定期訪問先への営業活動の重点化を図っています。

-主力製品と開発中の新薬-

「主力製品と開発中の新薬」図

特定領域(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)における開発パイプラインの拡充と医療関係者との強固な信頼関係構築により、新薬事業を強化しています。

デジタルチャンネルを活用した情報提供

「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」および新型コロナウイルス感染の拡大により、医療関係者への情報提供のあり方については、内容・方法の変革が求められています。緊急事態宣言等の発出によりMRの医療機関への訪問、医療関係者との面談自粛を余儀なくされる環境下、デジタルを活用した情報提供活動を積極的に展開しました。情報の提供・収集・伝達の媒介としてデジタルを多面的に活用する中、今後は自社で有するメディアだけでなく、他社のプラットフォームを通じた情報提供を含め最適化を進めます。さらに社内で集積した営業データを統合することで、医師への情報提供の質の向上に取り組みます。従来のリアル面談にデジタルを融合し営業力の補完・強化を図ることで、各医療機関の意向に沿ったMR活動を展開し、新薬群の成長加速に取り組みます。

一般用医薬品

多様化する健康ニーズに応え、安心して使用できる一般用医薬品の提供に取り組んでいます。

多様な健康ニーズに応える一般用医薬品

「一般用医薬品」の写真

2017年1月から導入された「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」により人々の健康意識は向上しています。当社グループでは、医療用医薬品の有効成分を一般用医薬品に転用した「クールワンシリーズ」を販売しています。プロモーションにおいては、医療用医薬品で蓄積された有効性・安全性情報を適正に提供できることから、高い評価をいただいています。今後も多様化する健康ニーズに応えることができる製品の提供を進めていきます。

※クールワンせき止めGX/液およびクールワン去たんソフトカプセルはセルフメディケーション税制対象医薬品です。

生産

キョーリン製薬グループ工場(株)は、生産拠点として有する3つの工場の生産特性を活かした上で、製造品目の全体最適化と適切な設備投資等により、ローコストオペレーションを意識した、信頼性の高い製造体制の構築に取り組んでいます。2020年度は新型コロナウイルス感染症が拡大する中、工場間の移動を伴う研修は行わず、各工場で実践に即する教育に切り替え、GMP(医薬品等の製造管理および品質管理の基準)のさらなるレベルアップに努めました。また製造作業を撮影し、映像化による技術伝承や最適行動の分析等、新たな技術獲得へのチャレンジによって、品質管理・安定供給体制の向上を図りました。今後は、これまでの取り組みをさらに推し進め、高品質な製品の低コストでの安定供給を実現し、グループ外からの受託の拡大を可能とする競争力のある製造体制の拡充を目指します。

強み 機会 リスク
  • 省人化、自動化による大量生産技術、グローバル基準に適合するGMPの運用、多品種生産を行う機動力等の特徴をもち多様なニーズに対応可能
  • 工場間の製造バランスの平準化、人員の流動化による効率的な稼働
  • 外資系企業の国内参入による受託製造のニーズ拡大
  • 後発医薬品の需要拡大への対応
  • 毎年薬価改定による原価率の上昇
  • 求められる品質レベル向上への対応によるコスト増加
  • 自然災害などでの生産活動や原材料調達の遅延や停止、物流機能の停滞による安定供給への影響
中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」
安定供給と低コストを実現すると共に受託製造の拡大も可能にする、製造体制を構築する
中期経営計画の施策
さらなるコスト競争力の向上への取り組み

キョーリン製薬グループ工場(株)では、工場間の人財交流や情報共有を行いつつ、改善・改良につながる技術を習得し、生産活動の中で実践しています。今後はGMPのレベルアップを推進し、生産力(能力、効率)強化と外部機関も活用した安定供給体制を整備することに取り組んでいきます。またグループ外からの受託の拡大にも注力し、強固な生産基盤の構築を目指します。

2018年4月にグループの生産機能を集約し、生産適正化によるコスト構造の変革に取り組んできました。当初2023年度までに再編効果として10億円のコスト削減を掲げましたが、2020年度に前倒しでその目標を達成しました。今後もローコストオペレーションを推進していきます。

品質確保の取り組み

工場間のGMP相互監査、データインテグリティ(データの完全性、一貫性、正確性を保証する仕組み)の強化、社員への定期的な研修と理解度確認の実施や映像を駆使した標準作業の習得等、様々な角度から品質確保に取り組み、医療関係者や患者さんの信頼にお応えしていきます。

新生産拠点設立に向けた取り組み

GEに対する需要の高まりに対応するとともに、外部からの受託も視野に入れ、生産能力の強化と生産性の向上を図るため、新工場(富山県高岡市)の建設準備に着手します。

サプライチェーン・マネジメント(SCM)

キョーリン製薬グループ全体でサプライチェーンを包括的に捉え、需要変動にフレキシブルに対応し、より効率的な生産と安定供給を実現する体制づくりに取り組んでいます。国内外における原材料調達から生産、在庫、出荷までを製品ごとに管理(見える化)するサプライチェーン・マネジメント(SCM)を推進し、発注から納品までのリードタイム短縮や発注先の複数化等により、安定供給に対するリスクの軽減を図り、確実で安定した製品供給を実現します。

各工場の特徴
能代工場:自動化によるローコスト大量生産

「能代工場」の写真

能代工場は、原料・中間製品を自動搬送するフロービンシステムや省人化を実現したロボットアーム等を採用することにより、自動化による高い生産性を有するローコストでの大量生産を可能にしました。現在は、この強みを活かして、錠剤やカプセル剤を中心として、新薬のみならず、生産数量の多い後発医薬品の生産も行っています。また海外当局や海外グローバル企業のGMP査察もクリアするなど、高いレベルで生産活動を行っています。

滋賀工場:グローバルGMPに対応した受託生産を中心に

「滋賀工場」の写真

滋賀工場は、外資系製薬会社の生産拠点として数十年におよぶ歴史を持ち、キョーリン製薬グループの主力製品の生産に加え、外資系製薬会社の日本向け医薬品の製造等、グループ外からの受託比率が高いことが特徴です。クロスコンタミ防止等を意識したグローバルGMP に対応する生産施設として最新設備の導入を進めることで、時代のニーズに対応した生産を可能にしています。海外グローバル企業からの豊富な受託経験とノウハウを活かし、生産設備の増強を推進して、グループ外からの受託拡大を積極的に進めます。

井波工場:後発医薬品を中心とした多品種生産

「井波工場」の写真

井波工場は、後発医薬品を中心として、内服固形剤のほか、無菌製剤である注射剤、点眼剤、点鼻剤といった様々な剤型の医薬品を製造しています。多品種生産に対応できる機動性を強みとし、年間2回上市される多様な追補収載品に適応しつつ、グループ外からの受託も含めて200品目以上を生産しています。高い頻度で行われる委託元の製薬会社からの査察等を通して、高品質な製品を安定的に供給するノウハウを蓄積しています。新たな製剤に対応するための設備投資とともに、生産性向上のための改善活動を積極的に推進し、コスト低減に取り組んでいます。

後発医薬品

「ジェネリック医薬品」商品画像

当社グループでは、キョーリン リメディオ(株)を中心にGE事業を展開しています。グループ内で開発、生産、販売の機能を合わせもつメリットを活かすとともに、新薬系後発医薬品企業としてオーソライズド・ジェネリック(AG)の取り扱いを積極的に推進してきました。今後は後発医薬品開発力の強化を図り、確実に開発品目を増やすとともに、営業体制を効率化し、コスト競争力の向上に取り組みます。

強み 機会 リスク
  • 開発、生産、販売の機能をグループで一貫保有
  • 新薬系後発医薬品企業としてAGの取り扱いを積極的に推進
  • 高齢化に伴う後発医薬品の需要増加
  • 大型先発医薬品の特許切れ
  • 後発医薬品使用促進のためのインセンティブ減少
  • 毎年薬価改定による収益性の悪化
中期経営計画「HOPE100 -ステージ3-」
GE営業体制の効率化によりGE事業のコスト競争力を高める GE追補品収載品の創出力を強化する

中期経営計画の施策

オーソライズド・ジェネリック(AG)への取り組み

当社グループは医療関係者や患者さんの様々なニーズに応えるべく先発医薬品、AGの両方をグループ内で取り扱い、順調に市場に浸透し一定の評価を得ています。「キプレス」のAGであるモンテルカスト錠「KM」を2016年9月、「ナゾネックス」のAGであるモメタゾン点鼻液50μg「杏林」を2019年8月、「ウリトス」のAGであるイミダフェナシン錠・OD錠0.1mg「杏林」を2020年6月に販売し、現在それぞれ後発医薬品内シェア50%以上を獲得しています。

追補収載品の創出力の強化

キョーリン リメディオ(株)では、安心してご使用いただける後発医薬品をお届けするために、医療関係者、患者さんの立場に立ち、医療現場での使いやすさや患者さんの服薬のニーズに応える製剤や包装の工夫を行ってきました。2017年7月に稼働した「高岡創剤研究所」では、製剤開発の質の向上とスピードアップを図るとともに、これまで以上に開発製品の増加に取り組み、魅力的で特徴ある後発医薬品を提供する後発医薬品企業を目指しています。2020年度は、9成分17品目の追補収載品を上市しました。

営業体制の効率化による事業コスト競争力の向上

キョーリン リメディオ(株)では、これまでバランスの取れた複数の販路を通じた販売を強みとしてきましたが、今後はその強みを活かしながら、営業体制の効率化を図り、選択と集中により販売力とコスト競争力を高めていきます。